大阪高等裁判所 昭和36年(う)232号 判決 1961年6月05日
控訴人 被告人 田中伐
検察官 道前忠雄
主文
原判決を破棄する。
被告人を罰金五〇〇〇円に処する。
右罰金を完納できないときは、金二五〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置する。
理由
本件控訴の趣意は、弁護人森本丈衛の提出にかかる控訴趣意書記載のとおりであるから、これを引用する。
職権をもつて調査すると、原判決は証拠説明として右原判示事実は検甲第一、二、七号証により認めると記載している。右記載の趣旨は第一回公判調書中の証拠一覧表の番号1、2、7の証拠書類を引用したものと認められる。刑事訴訟規則第二一八条の二によると、このように公判調書に記載された証拠の標目を特定して引用することの許されるのは、簡易公判手続によつて審理された事件の判決書に限られるものである。しかるに本件は、第一回公判調書の記載によると、通常手続によつて審判されたもので簡易公判手続によつて審判されたものでないことが明白である。従つて証拠説明をするにあたつては、刑事訴訟法第三三五条第一項にいう証拠の標目を示さなければならないものであるが、原判決の如く検甲第一、二、七号証とのみ記載したのでは証拠の標目を示したということができない。原判決はこの点において理由不備の違法があり破棄を免れないので、弁護人の量刑不当の論旨に対する判断を省略し、刑事訴訟法第三九七条第三七八条第四号に則つて原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に従つて次のとおり判決する。
(罪となるべき事実)
罪となるべき事実は原判決摘示の事実と同一であるからこれを引用する。
(証拠の標目)
右事実は
一、道路交通取締法令違反事実現認報告書
一、横田宗裕の検察官に対する供述調書
一、被告人の検察官事務取扱検察事務官に対する供述調書
を綜合してこれを認める。
(法令の適用)
法律に照らすと、被告人の判示所為は旧道路交通取締法第七条第一項、第二項第五号、第一〇条第一項、同法施行令第一五条第一項第二号、同法第二八条第一号、道路交通法附則第一四条に該当するので、所定刑中罰金刑を選択し、被告人を罰金五〇〇〇円に処し、刑法第一八条を適用して右罰金を完納できないときは金二五〇円を一日に換算した期間被告人を労役場に留置することとして主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 児島謙二 裁判官 畠山成伸 裁判官 松浦秀寿)